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完成はどこか?

よく質問などで、「1曲として完成させるのが難しい」というのを聞きます。特に初心者の方に多いです。
この言葉だけだと、いろいろ捉え方はあると思うのですが、話をきくと大体

・フルコーラスの「1曲」としての構成を完結させるのが難しい
・2mixとして人に聴かせられる状態にするのが難しい
の2通りに分かれます。

これは意外と非常に難しい問題だと思います。形のあるものではありませんから、突き詰めていったらきりがないですし、理想を追い求めすぎると終わりがなくなってしまいます。それでもある段階では完成という判断をしなければいけません(仕事だとなおさら)。

そこをどう自分で判断するのかという基準の一つとしては、ぼくはこう考えます。
「自分がその曲でやりたいことが、十分に過不足なく出来ているか」

そして、その作品がより多くの人に聴いてもらうことを想定している場合は、
「そのやりたいことが、人に伝わりやすい形で収録されているか」
が大事なことかと思います。

仕事の制作となると、まずクライアントの要望や条件を満たすものというのが絶対必要になるので、また少し変わってくるかもしれませんが。

「十分に過不足なく出来ているか」といのは、その曲で表現したいことや伝えたいことがきちんと実現できているかということです。それは歌詞かもしれませんし、声かもしれませんし、ギターソロかもしれません。あるいは全部かもしれません。そしてやりたい要素のどれかがトゥーマッチになっていないか。没頭して作っていると例えばある楽器だけがやたら目立ってしまっていたり、構成上あるセクションだけ他の部分とテンションがかけ離れていたりすることもでてきます。そのせいで全体としての印象が、一番やりたいことの本筋からずれてしまうとしたら、それは避けるべきです。「その曲で何をやりたいのか、伝えたいのか」というのは制作中ずっと忘れてはだめだし、極力変えるべきでもありません。

その上で、1曲を最後までリスナーに聴いてもらうための最適な形と魅力をその曲が持っているか、ということですね。飽きさせてもだめだし、意図しない意外性はあまり望むべきものではありません。構成も、Aメロ〜Bメロ〜サビというのは一つの形にすぎませんが、聴く人をスムーズにナビゲート出来ているかどうか。その上で、ちゃんと自分の伝えたいことが最適な形で鳴っているか、伝わってほしい姿で他人に届く資格を持っているか。それを判断するには、曲というものを「客観的」そして「俯瞰的」に眺める視点が必要です。

その判断をする耳は、やはり一番は経験に培われるものだと思いますが、2mixに関しては少々乱暴に言ってしまえば「市販の曲と比べる」ことが一つの基準にはなると思います。一流のアーティストの、プロのスタジオの機材でミックス・マスタリングされたものですから、それと自分の2mixを聴き比べてみて何が違うのか、何が足りないのかを冷静に確認してみることは、クオリティを上げるためにはとても重要なことだとぼくは思います。

オススメの方法の一つとしては、「曲をいろんな音量と環境で聴いてみる」ことです。
すごく小さい音量で再生してもちゃんと旋律が伝わるかとか、イヤホンで聴いても迫力が伝わるかとか、ここでも市販の曲と聴き比べてみたりしてみるとまた発見があるかもしれませんね。