トラックの質感をわざと荒くする方法
こんばんは、DJ TAKI-SHITです。
ここ15年くらいP.Diddyことショーンパフィーコムズがキャッチーな
ソウルR&Bネタトラックで全米チャートを席巻していた90年代後半くらいから、
アメリカのHIP HOP,R&Bシーンはトラックの質感が、艶があってつるっとした
キレイな感じが、メインストリームとなっています。
P.DIDDYの他には、今年ラッキーでハッピーだったファレルのプロデュースチーム
NEPTUNES、やダークチャイルドこと、ロドニージャーキンスなども
ビーツの素材一つ一つが、最上級に磨かれまくっていて、
非常にタイトで粒だった仕上がりになっています。
(余談ですが、実は僕はロドニージャーキンスの作るサウンドプロダクションが
毎回とても地味に聴こえて、本当に好きになれなかったですね~)
その為、音数が少なくなって全体的にクリアなサウンドとなっているのが特徴的ですね。
しかし、それ以前90年代の初期から中盤、HIP HOP,R&Bが最も面白かった時代、
レコードでジャケ買いが出来た時代、すなわちハズレがなかった時代はサウンドの質感は、
トラックのベースになる部分がサンプリングを主体とした、
ラグドで荒々しいビーツ感というのが、主流でした。
時代的に使っている機材の出せる音がどうしても荒々しく鳴ってしまう、
E-MUのSP1200というドラムマシーンをみんなが挙って使っていたという事実があります。
当時を振り返るとあの音というのは、SP1200を持っていないと、出せる音ではなかったんですね。
今の時代とは、真逆でクリアな音だとダサいと言われてしまう時代でした。
この辺りのサウンドを追及しているアーティスト達は、アンダーグラウンドシーンを
中心に今でも根強い人気があり、DJ プレミアを始めとして、アルケミスト、
9TH WONDERなんかが顕著ですね。メジャーシーンでは、カニエウェストなんかも
こっちの部類です。
前置きが長くなってしまいましたが、今日は全体的にクリアな質感のするトラックに
ちょっとしたアクセントを加えるだけで、HIP HOPっぽいストリート感を
演出することができる手法を書いてみたいと思います。
例えば全く関連性のないジャンルから1部分のみサンプリングをして、
EQでボトムやローエンドを削ってFXや、SE的な素材として、もう一味トラックに
付け加えていくというのは、よくやります。
他にも素材を逆回転してサンプリングして質感を加えるという手法もあります。
今やヒップホップ レジェンドとなってしまった、マーリーマールの名曲
MC SHANの「THE BRIDGE」のイントロのファ~ファ~ファ~という音があります。
MC Shan – The Bridge
この音って、僕も初めて聴いたとき、なんの音なのかな?という
全く連想できない音だったんですね。こんな音、シンセのプリセット音には
もちろん入っていないし、シンセの音を混ぜて作れるものでもないですからね。
このイントロの音、実は元々はこの曲のホーンアンサンブルの音を
逆回転したものなのです。(0:14秒くらいからの音です。)
The Magic Disco Machine – Scratchin’
これがサンプリングサウンドの面白さなんですね。なんかわからないけど、
妙にストリート感が出てしまうという。
この事をマーリーマール本人が種明かししたビデオがこちらです。
Marley Marl ‘Classic Recipes’ – Recreating MC Shan ‘The Bridge’ w/ Akai MPC Renaissance
トラックにアクセントとして、荒々しいラグドな質感を加えたい時、
そのまま何かジャンルが全く関連性のないところから、持ってきてサンプリングして素材として
乗せるというのもありですが、この手法のように、素材を逆回転したものを
サンプリングして使うというのも簡単にできて面白いです。
最近は普通のポップス、アニソン、なんかにもビートのクオリティーの高さが
求められますので、もう一味加えたいという時、試してみるのもありですよ。